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流星電波観測の種類

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流星電波観測には,そもそも散乱の種類,そして使用する周波数も様々です.特に使用する周波数については,2010年代半ばごろより,SDR(Software Defined Radio)が広く普及したことで,従前はアマチュア無線を利用した電波観測が中心でしたが,その幅が広がりました.

散乱の種類

流星は電離柱で反射すると説明しましたが,厳密には,散乱が起こっているわけです.みなさん次のような経験はないでしょうか.「強力な懐中電灯を夜に外でつけたら,光の帯ができた」これは,光が大気中の粒子によって散乱しているのです.流星が発光した際に電波があたると,電波もそこで散乱が起こります.その散乱には二種類あります.

散乱の種類

後方散乱 (レーダー観測はこちら)

後方散乱(Back Scattering)とは,電波を発信して自ら受信する,送信局と受信局が同じになる散乱です.昔からレーダー観測として世界で行われてきました.近年は,前方散乱を利用した流星電波観測が主力なってきていますが,チェコやオーストラリア,日本の信楽にあるMUレーダーなどは有名です.この観測では電離柱に対して垂直に当たることが条件です.電波を発信してから,その電波が戻ってくるまでの時間を測定することによって,その物体への距離を測定することができます.

前方散乱 (HRO, FRO,VORはこちら)

前方散乱(Forward Scattering)とは,送信局から出た電波が電離柱に入射角=反射角で散乱され,送信局とは異なる場所が受信局となるものです.現在日本で主流になっている流星の電波観測はこの前方散乱を利用しています.日本ではアマチュア無線やFM放送を利用しており,世界的には,FM放送の電波を浸かっている観測地点がほとんどです.

使用する電波による違い

上記のように,電波の散乱の種類は二つありますが,今回みなさんが行う流星の電波観測は,前方散乱による観測を行います.さて,そのような中で,流星の電波観測は,以下の3種類があります.それぞれ特徴があります.しかし,これから流星の電波観測を始めるという方には,HROまたはFROをお勧めします.

HRO(Ham-band Radio Observation)

 HROとはアマチュア無線を利用した流星電波観測です.現在日本で,高校生からプロまで広く使われている観測方法です.用いられている周波数は53.755MHz(福井県立大学アマチュア流星電波観測研究会)が主流.自動観測ソフトも開発されており,初心者でも観測は容易です.この他,2002年頃に28MHzを利用した観測も行われましたが,現在は53MHzのみです.50MHz近辺ではいくつかの電波を利用できます(あまり送信局に近すぎると直接波が入るので,適度に離れていた方がいいです.海外ではあまりアマチュア無線を使った観測はないようです.

FRO(FM Observation)

 FROとはFM放送を利用した流星電波観測です.1980年代に行われていた観測方法で,みなさんがラジオで聴く,FM放送局の電波を用います.90年代に入ると放送局の多局化で観測が困難となり,ほとんどの観測者がHROにシフト,日本国内においてはFROはほとんど行われなくなりました.ところが,2010年代に入り,地デジ移行に伴うFM補完放送が始まったのをきっかけに,遠方かつ送信出力が大きな放送局を選ぶことで観測することができるようになってきました.特に近年はSDR(Software Defined Radio)が普及していることと,アンテナもFM放送用のアンテナが安価に販売されているため,意外と簡単に始められます.なお,この観測方法はFM放送局を使用するからといって,お手持ちの普通のラジオではまず聞こえません!きちんとした受信機とアンテナが必要です.念のため.....

VOR (VHF Omni directional Range)

VORとは超短波全方向式無線標識施設を利用した流星電波観測です.この観測方法は2002年より本格的に行われるようになってきました.HROやFROと比べると周波数が108MHz~118MHzと高めになっています.超短波全方向式無線標識施設は,航空機に対してこの施設からの方位情報を提供するための施設です.周波数の安定性があまり良くないのと,電波が天頂方向には出ていないので,その点は留意しながら観測をしましょう.こちらもFRO同様,SDRが普及したことで,アンテナさえ何とかすれば観測は比較的容易です.詳しくは杉本弘文氏のWebをご参照ください.

icon ご参考:VORによる電波観測方法(杉本弘文氏:わかりやすいページです)

MURO(MU Radar Observation)

MUROとは,中・高層大気を観測する目的で用いられているMUレーダーを利用した流星電波観測です.周波数は46.500MHzです.90年代後半から2000年代前半は時々行われていましたが,日々電波が出ているわけではないこともあり,現在国内でこの観測は行われていません.


これから始める方はHROがお勧め

電波観測を始めよる方は,まずは観測実績が豊富にあるHROをお勧めします.

HROは実績と安定した送信

HROは1996年から行われており,観測方法としては確立されています.また,アマチュア無線だからこそ安定した運用がされています(もちろんその背景には送信側の尽力あってですが).

FROは安価で設置しやすいが選局が難

FROはFMアンテナなので,HROのアンテナより流通品で安く.しかも軽いので,設置もしやすいのが特徴です.ただし,2024年に朝鮮半島の電波が停止したこともあって,安定した送信局を探すのがたいへんです.

VORはアンテナ加工が必要

VORは国内どこでも観測できますが,周波数が高いため,FMアンテナを加工する必要があります.それさえ乗り越えられれば観測は可能です.ただし,一般的に周波数が高くなると捉えられる流星エコー数は減るので,エコー数はHROやFROに比べると少なくなります.

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それでは,流星電波観測を始めてみましょう!