流星電波観測国際プロジェクトの趣旨
流星電波観測国際プロジェクトについて,発足の想いや経緯,プロジェクトの位置づけ,目的などを掲載しています.
プロジェクトの想い
宇宙からのメッセージ「流れ星」を確実にキャッチする
流れ星は地球上に毎日降り注いでいます.それは悪天候だとしても,そして昼間だとしても流れています.流れ星の大きさはとても小さくそして軽い.しかし,それらを集めると,流星群の活動の全体像が見えてきて,さらに流星を生み出している「すい星(彗星)」,さらには太陽系と宇宙全体が見えてきます.
そんな流れ星を,昼夜・天候に依存することなく,24時間体制・地球レベルでの観測網を実現したい.このプロジェクトを発足させた当初の想いです.
流れ星の世界をより多くの人に届けたい
日頃暮らしている中で,流れ星に接する機会は意外と少ないもの.流星を目で見ることに加え,電波を使うことで流星の世界をより多くの人に届けたい.
「夜に流れ星を見る時間を取れない」「そもそも家では星があまり見えない」「目が不自由で流れ星を見ることができない」・・・世の中には様々な制約事項があるもの.そのような状況でも多くの人に流れ星の世界を届けたいというのが,このプロジェクトのもうひとつの想いです.
市民が参加した科学研究を行えるプロジェクトへ
当プロジェクトでは「社会参加型研究」(山本真行(2003):日本天文学会2003年秋季年会)スタイルを目指しています.「社会参加型研究」とは,年齢や職業,観測経験や期間を問わず,興味をもった方がやりたいことができる,市民が参加した科学研究のことであり,通常よくある「研究者・専門職者」がコアメンバーとなって形成されるプロジェクトとは大きく異なります.
「観測者に徹してもOK」「集計や解析に徹してもOK」「プロジェクト内で,役割を変えてもOK」など,やりたい人がやりたいことをやれる範囲で実施できることが特徴です.このことにより,無理のない範囲で趣味でも続けることができ,結果的にはそれが知らず知らずのうちに科学研究を行っていることにもなります.
詳しくは「流星電波観測国際プロジェクトへからみる社会参加型科学研究」(2004年日本天文学会発表)をご覧ください.
プロジェクトの歴史
2000年夏,この年のしし座流星群に向け,和歌山県みさと天文台で,「全国の電波観測データを集約したページを作ろう」・・・プロジェクトの基本構想が練られました.2000年の結果から,日本だけのスケールでは放射点の問題が露呈したため,2001年に世界レベルでしし座流星群電波観測国際プロジェクトとしてスタート.海外の多くの方々の協力も得て,2003年には23カ国120地点以上の観測地点からデータを頂くことができました.
その後は,しし座流星群のみならず,主要流星群の結果を集計しつつ,国内の毎月データを一か所にまとめておく役割として機能しています.
プロジェクトの目的
・主要流星群を昼夜・天候・地域に左右されず全容を捉える
・毎月の結果より突発流星群がなかったかどうかを確認する
・流星天文学の発展のための基礎データを収集する
・天文教育及び生涯教育の題材として活用できるよう広報・支援する
・正確な情報を提供する
プロジェクトの位置づけ
世界的には,Christian Steyaert氏が主導している,Radio Meteor Observation Bulletinがあり,世界の観測データは現在ここに集約されています.ほぼ1時間毎に最新の観測データが更新されており,1カ月に1度とりまとめたデータが提供されています.本プロジェクトではそのデータを受けて,個別流星群毎の解析を行います.さらに,日本の杉本弘文氏は流星電波観測集計センターとして,RMOBのデータを使った各流星群の速報値を提供しています.RMOBが観測のデータを,流星電波観測集計センターが速報値を,そして本プロジェクトが最終結果を公開しています.
図:本プロジェクトの位置づけ
参加メンバー
当初数年間は,プロジェクトへの登録制としていましたが,現在は登録制とはしません.本プロジェクトでは上記の通り,Radio Meteor Observation in Japan(RMOJ) への掲載及び流星活動の最終解析データとして,プロジェクトに寄せられるデータを使用します.したがって,観測されている方は,事前登録や報告に際しての条件はありませんので,ぜひ観測されたデータをお寄せください.ご報告については,「流星電波観測月例報告(RMOJ)について」をご参照ください.
データ/結果の主な報告・共有先
国際流星機構(IMO):速報,集計・分析結果
Meteor News:月例報告,集計・分析結果
Radio Meteor Observation Bulletin:速報値,報告
日本流星研究会:月例報告,速報
日本天文学会:分析結果
プロジェクト名称について
流星電波観測国際プロジェクト(IPRMO:International Project for Radio Meteor Observations)を世界的な呼び方とし,海外webのドメインは「iprmo.org」としています.
一方で,日本国内については,本プロジェクトの構想が立ち上がったころに使用していた「AMRO-NET」を主に使用しています.記憶が定かではありませんが,AMRO-NET: The Activity Monitor by Radio Observations だったと思います.ドメインの「amro-net.jp」も当時からの日本における名称の浸透度を考慮し,このドメインで取得しています(今後,iprmo.orgのサブドメインに集約することを考えています).
プロジェクト運営
本プロジェクトは,法人格はございません.あくまでアマチュア天文サークルのひとつとして活動をしています.また,本プロジェクトでは,「社会参加型研究スタイル」として,敢えて事務局や会員制度は設けておりません.参加したい人が参加し,中心になって集計・分析したい人が集計・分析をするというスタイルを採用しています.従って,プロジェクトの代表者を置くものの,特に会員という概念は存在していません.
参考情報
・世界の流星電波観測による流星群活動の完全監視(Meteoroids 2001) -英語/日本語
・流星電波観測国際プロジェクトへからみる社会参加型科学研究(日本天文学会 2004)
プロジェクト代表
プロジェクト代表:小川 宏
プロジェクト発起人(所属は発足当時)
小川 宏(筑波大学),豊増 伸治(みさと天文台),大西浩次(長野高専),前川公男(福井高専)