2023年5月にピークを迎えるみずがめ座η流星群の見頃及び観測のポイントについて、目で見る眼視観測、電波観測それぞれの観点で紹介します.
日本での観測条件(総評)
日本におけるピーク時刻等を加味した2023年みずがめ座η流星群の観測条件は,電波観測としては「あまりよくない」.また,目で見る場合としても「よくない」です.が,「2023年は要チェック」です.目で見る眼視観測,電波観測それぞれの観点で紹介します.
最新情報(速報)
世界の流星電波観測による速報値を公開しています.※速報値のため,最終的には値が変わる可能性がありますのでご承知おきください.
眼視観測の観測条件
眼視観測(目で見る場合)の観測条件は「よくない」ですが,2023年は例年の出現数よりも多い可能性があり要注意です.
総論 | ピーク時刻は放射点が地平線下.さらに月明りもあって条件は良くない.月明りを視界に入れないよう見てみましょう. なお,5日未明~7日未明は通常よりも流星数が多くなるという予想があります.日本の場合,夜明けの頃では放射点が高く昇らないため,実感できるほどの流星数とまではならないと思いますが,要チェックです.(詳細:2023年・24年は活発な活動の可能性) |
||
---|---|---|---|
月齢条件 | 月齢17 |
月齢17と満月過ぎの月明り.放射点が昇った後も月明りがあります.月を視界に入れないよう月とは反対側の空を見るとよいでしょう. | |
ピーク時刻 (JST) |
5月7日 0時頃 |
ピーク時刻は放射点が昇る前の時間ですが,前後数日は同規模の活動を見せる流星群なので,この時刻に拘らず,前後の夜間に見ることができます.なお,2023年は通常よりは多少多めに流れる可能性があります.(詳細:2023年・24年は活発な活動の可能性) | |
見る方向 (方角) |
流星の出現位置という意味では「どこでも構わない」ですが,街明かりが少ない方向を見てください.なお,2022年は月明りもなくて天の川も見られるし,惑星も多いので,南から東側を見ていると楽しめるでしょう. | ||
おすすめの 時間帯(日本時) |
① 5月7日01:00~7日夜明け(通常ピーク) ② 5月5日01:00~5日夜明け(要チェック!) ③ 5月6日01:00~6日夜明け(念のためチェック) |
- 夜はまだ冷えるので,必ず長袖をご用意ください.
- 動物が活動する頃です.特に大型動物の情報はこまめにチェックしておきましょう.
- 私有地への無断立ち入りはダメ.ゴミは持ち帰りましょう.当たり前を当たり前に.
- 感動する気持ちはよくわかりますが,頑張って大声は抑えてください.
- 寝不足になりますので,居眠り運転をしないよう計画的に移動しましょう.
- 治安には十分ご留意頂き,お子様には必ず大人の方が付き添ってください.
みずがめ座η流星群ピークの夜空
日本時間で2023年5月7日03:00(東京)の夜空.月はさそり座とてんびん座の間.放射点は土星の近く.
星図:StellaNavigator/AstroArts (アストロアーツ楽天市場店)/(Amazon)
電波観測の観測条件
2022年みずがめ座η流星群の日本における「流星電波観測」の観測条件は「あまりよくない」です.(参考:眼視観測の場合)ただし,2023年は4日~7日にかけて通常よりも多い活動の可能性があるので要チェック!前回活発だった2012年や2013年はエコー数が3倍程度,ロングエコー数はペルセウス座流星群頃に匹敵する程の量になりました.
総 評 | ピーク時刻は電波観測の過去の結果からだと5日18時と日中(電波観測では眼視観測よりも1日早くピークを迎えています)と,観測条件としては悪いのですが,ピーク前後数日は同規模活動のため,あまり気にせず観測できるでしょう.放射点が昇る1時頃から12時過ぎまで観測できるでしょう.ロングエコー数が伸びるかは年によります. なお,みずがめ座η流星群は2023年と2024年は出現数が多くなる可能性が指摘されています.2023年はA.Egal氏らの計算では5日13時JST頃.M.Maslov氏は4日10時~17時頃,6日10時~7日4時頃としています.あくまで予想なので,外れることもありますが,電波観測では継続した観測ができるので,2023年は総エコー数,ロングエコー数共に推移をチェックしていきましょう.詳細:2023年・24年は活発な活動の可能性. |
---|
このグラフは,流星電波観測による過去の結果から,流星エコー数が通常よりどの程度多くなりそうかを計算したものです.ピークを挟んで前後数日は同じ規模の活動が続きます.(なお,前述の「2023年例年より多く出現する可能性」の数は上記に盛り込んでいません)
世界で見た時の観測条件
総 評 | ピーク時刻からするとオセアニアが好条件(前述のとおり,あまりピーク時刻は厳密に気にする必要はないでしょう).みずがめ座は南半球へ行くと空高く上がります.また,「通常より多くなる」と指摘されている時間帯は,時間帯によって適地が異なります. なお,海外でご覧になる際は,くれぐれも治安にご注意ください. |
---|
23年/24年は活発な可能性
みずがめ座η流星群は約10年単位で活発な出現を見せており,前回2013年には電波観測でも例年の3倍くらいのエコー数と,豊富なロングエコーを捉えることができました.A.Egal氏らによると,2023年と2024年が例年よりも活発な活動となる可能性が予想されています.
5日日中に最大ZHR130の予想
元々は,ZHR60くらいの流星群ですが,A.Egal氏らの予想では,下の図のとおり例年の約2倍に達する予想です.ただし,あいにくピークは日中となり,さらに電波観測でも放射点が沈む頃なので,日本からは条件はよくはありません.また眼視観測では月明りもあります.M.Maslov氏は4日10時~17時頃,6日10時~7日4時頃となっており,2つめは日本でも夜間となるでしょう.なお,図のとおり,多少の前後は大した問題ではないので,A.Egal氏らの予想であれば5日の放射点が昇ってから沈むまでを中心に前後1日,Malsov氏の予想に基づけば,4日の放射点が昇ってからと6日そして7日の放射点が昇ってからが要チェックでしょう.
眼視観測の場合
眼視観測では,日本からの場合,放射点が昇る1時頃から薄明開始となる3時過ぎまでが観測できる時間帯であり,観測時間は限られます.加えて,満月頃の月明りがこの頃あるため,月明りがある中での観測となってしまいます.東京の場合,5日3:30頃の放射点高度はおよそ25度.この頃の推定ZHRは120くらいですが,月明りと放射点高度を考慮すると,実際に見られるであろう流星数は,1時間換算でもおよそ10個(5日未明).つまりZHRの数値の10分の1以下です.確かに5日未明の流星数は通常と比較すると多めですが,そこまで多いという印象にはならない可能性があります.
なお,放射点高度については,南に行けば行くほど条件は良くなります.薄明開始時点(3:10頃)の放射点高度は東京では20度ですが,鹿児島(同4:00頃)では25度,沖縄(同4:26頃)では30度弱.タイのバンコクでは40度弱(同4:40LST頃),ジャカルタで45度(同4:40LST頃)などです.逆に札幌では10度弱(同2:10頃)と,北に行くと不利になります.なお,ピークとされる5日13時JST頃に条件が良いのは,アフリカ中部です.月明りがあるのは世界共通です.
電波観測の場合
電波観測では,放射点が昇ってから沈むまで観測することができます.前回活発だった2013年はエコー数では通常の3倍,ロングエコー数も夏のペルセウス座流星群に匹敵する程の多さとなり,とても賑やかな出現となりました.2023年が一体どの程度のエコー数,そして,ロングエコー数となるのか注目です! 下の図は,東京における5月4日~5日にかけての観測条件です.
4日~7日は眼視観測の場合は放射点が昇ってから薄明開始まで.電波観測の場合は4日~7日の放射点が昇ってから沈むまで要チェック.眼視観測では通常よりは多いものの,体感的に多くは感じない可能性大.電波観測ではロングエコー数の増加にも注目!
2024年は?
A.Egal氏らの予想では2024年も例年より活発な活動が予想されており,規模は2023年を上回る可能性があります.来年は5月6日未明に注目です.月明りもなく2024年の方が条件よく観測できそうです.その後は,2044年~2046年頃に再び活発な活動が予想されています.
みずがめ座η流星群とは?
みずがめ座η流星群とは,5月のゴールデンウィークにピークを迎える流星群であり,出現数は日本からはそれほど多くはありませんが,ゴールデンウィーク(5月大型連休)にピークを迎えることもあり,観測しやすい流星群です.また,夜明け頃の空は,空が暗ければ夏の星座や天の川も見られるので,夜空を楽しむには良いでしょう.この流星群はオーストラリアやニュージーランド,南アジアや南米などで多く見られます。海外でご覧になる場合は,治安にくれぐれもお気を付けください.
流星電波観測の場合,活動は高現状で,明瞭な鋭いピークは観測されません.4月末からその活動が観測され,5月大型連休中は数日間,同規模の活動が観測されます.ロングエコーも通常時よりは多めに観測できるでしょう.
詳細は「みずがめ座η流星群(5月)の基本情報・観測条件」をご覧ください。
参考文献
- J. Rendtel (2023): “Meteor Shower Calendar”, International Meteor Organization
- A. Egal, P. Wiegert, P.G. Brown, M. Cambell-Brown and D. Vida (2020): “Modeling the past and future activity of the Halleyids meteor showers”, Astronomy & Astrophysics
- M. Maslov, Meteor shower activity predictions