2025年11月度の日本国内流星電波観測者による電波観測結果の月次報告です.流星活動状況の報告,ロングエコーの出現状況などを掲載しています.
2025年11月度トピックス
11月はしし座流星群がピークを迎えました。また、月初にはおうし座南流星群も活動します。ただし、それぞれの規模は例年低いため、そこまで顕著な活動は捉えられません。2025年はしし座流星群の母天体によるダストトレイルとの接近が予想されていましたが、明らかな活動があったかは微妙なところ。おうし座南流星群についてはエコー数は10月末に比べると多かったようで、例年よりも若干多めだったのかもしれません(今回はそこまで分析していません)。
しし座流星群
2025年は元々λ⦿=235°.3~λ⦿=235°.5付近で1699年ダストトレイルとの接近が予想されていました。λ⦿=235°.31(18日3時JST台)が少し高いように見えなくもないですが、近似してもActivity Level=0.3と通常値の範囲である0.0±0.4に収まってしまい、顕著な活動とはならなかったと思われます。
ただし、杉本氏による電波観測結果の集計では18日3時JST台にエコーの増加がみられるサイがあり、18日3時JST台にZHRr=32±4という結果が出ています。10分ごとのデータからは特に18日3:30~4:20JSTのZHRrの値が高くなっています。何らかの活動はあった可能性はありますが、現時点でIPRMOでは明確な活動があったとまでは言い難い状況です。
また、後述しますが、ロングエコーの動向は興味深く、もう少し詳細に分析してみたいところです。

月例報告・Activity Level
流星電波観測会報(月例RMOJ)
Radio Meteor Observation in Japan No.289として更新.国内11地点14データを収録.
(藤戸様,杉本様,坪井様,中村様,信太様,大塚様,鈴木様,吉川様,奥野様,松田様,脇田様)
2025年11月ActivityLevel(日本国内のみ/統合グラフ)
RMOJのデータに加え,狩野正樹様のデータも加えて算出しています.11月は前半にActivity Levelがあがりました、時期からするとおうし座南流星群の活動期に相当しますが、これだけ明確に出るのも珍しい気がします。この他の期間では特記すべき活動や傾向はありませんでした。

ロングエコー関連の報告
1日のロングエコー(国内統合)
11月のロングエコーは、おうし座南流星群が活動する11月前半としし座流星群の頃に増加しました。以下左のグラフは、2025年11月の1日当たりのロングエコー数(参考値)を示しており、右のグラフではその値が、過去5年平均と比較して何倍だったのかを示しています(過去5年平均と同じ=1.00)。11月4日や5日、10日、19日のロングエコー数は過去平均と比較して約1.8倍多くなりました。

11月4日~5日については、おそらくおうし座南流星群によるものでしょう。元々2025年は明るい流星が見られるかも?ということでしたので、その結果なのかもしれません。
11月10日の増加は何によるものかはわかりません。偶然?にも、11月10日はしし座流星群の1167年放出ダストトレイルが接近するという予想がある日です。その結果だとしたらとても興味深いですね。これも偶然かもですが、サイトによっては10日5時~8時(JST)台にエコーが集中しており、1167年ダストトレイル接近予想は10日7時頃です。ただし、ほぼすべてのサイトが増加しているか?というとそうでもないので(特に関西の観測サイトは少ない)、他の観測データと照らし合わせる必要はありそうです。※Activity Levelはこの期間算出しておらず、エコー数の観点でどうだったのか?は追加で集計・分析する予定です。
19日の増加はしし座流星群によるものでしょう。ただし、ダストトレイルとの接近は18日未明、通常ピークも18日未明であることから、ロングエコー数のピークが1日ずれています。エコー数のピークとロングエコー数のピークがずれることはオリオン座流星群ではよくある話ですが、しし座流星群では珍しいかもしれません(もちろん偶然の可能性もあります)。
この他、左のグラフでは、22日もロングエコー数としては頭ひとつとびぬけていますが、右のグラフでは、過去5年平均並みとなっており、過去5年間を見ても、22日はこの程度のロングエコー数が出現しているといえます。ちなみに過去5年ではなく、ロングエコーデータを集計し始めた2010年~2024年までの15年平均をとってもこの傾向は変わりません。うるう年の影響はあれど、22日は例年周辺の日付と比べると多めに出現しているようです。