流星エコーのカウント

時々お問い合わせがあります。

どれを流星エコーと捉えればいいでしょうか?

今日はこの問いに答えてみます。

そもそも流星が出現するとは?

流星の出現とはどのような特徴があるでしょう?

  • 空を移動する
  • 明るく光る

単純に言えばこんなとこですね。これを流星電波観測で観測すると「どうなるはずか?」を考えてみます。するとこんなかんじです。

  • 空を移動する ⇒ ドップラー効果が起きる
  • 明るく光る ⇒ 信号が通常より強く受信される

つまり、HROFFTやMROFFTの画像を見ていて、「ドップラー効果が起きていて」かつ「強い信号」があればいいわけですね。

HROFFTの画面を見てみる

下の画像を見てみましょう。

さて、どれが先ほどの「ドップラー効果が起きる」かつ「強い信号」に該当するでしょうか?(送信局周波数92.5MHzをUSBで受信)

先ほどの条件に合わせてみると、次のようになります。

「ドップラー効果が見える」とは、HROFFTの縦軸は周波数ですから、周波数が変化します。出現時間は1秒にも満たないですから、HROFFTの画面上では1ドット1秒なので縦線になります(救急車が一瞬で通過するイメージですね)。下の棒グラフは受信強度です。10dBごとのラインで、10dBを超えると黄色くなります。

ここまでは、別ページ「観測データの集計と公開」でも説明しているところです。

カウントに困る画像には必ず出会う

ところが、実際カウントをすると、絶対に「数えるべきかどうか」迷う画像に出会います。例えば以下のような画像。

さぁ、あなたなら、この画像からいくつと数えますか?

なお、画像は先ほどと同じで92.5MHzを92.4991MHzのUSBで受信しています(実際は40Hz程ずれています)。画像の1.0kHz付近になるものはノイズなので気にしいないでください。エコーは画像でいうと0.86kHz付近に出ています。

2?、3?、4?、それとも、5?

大事なことは判断基準をぶらさないこと

先の画像で2と数えた方はおそらく10dBをこえているからでしょう。4や5と数えた方はおそらく、ドップラー効果が見えるものをカウントしたのでしょう。

正解は「どれでも結構」です

ただし、条件があります。それは

その「判断基準がブレないようにする」こと。

流星電波観測国際プロジェクトでは、世界の地点のデータを扱う際は、「通常時に比べてどのくらいの活動規模か?」という相対値(Activity Level)を求めます。

従って、エコーのカウント基準はご自身の中で統一さえしてくれれば、それでいいのです。むしろ、このエコー判断基準がブレることの方が問題なのです。

上記のように、2と数えた方はピンクが基準でしょう。4と数えた方は強度を見つつも、ドップラー効果が見えているとカウントする方です。実際強度はあと少しで10dBとか微妙な時は多く、ドップラー効果が見えているならカウントするというのも判断基準のひとつとしては良いと考えています。私もドップラー効果が見える流星エコーは例え強度が10dBにいかなくてもカウントしています。

とにかく大事なこと。それは、

ご自身の中でのエコー判断基準を変えないこと

学校の部活動では、できる限りみんなが同じ基準でカウントするように練習しましょう。

カウントを惑わす厄介な画像

HROではあまりないですが、FM放送を用いたFROでは時々お出ましになる画像があります。それが「エコーの出現位置が地味に違う」です。

例えば、以下の画像が通常時です。画面上部のロングエコーっぽいのは無視してください。

この画像は89.4MHzの電波を89.3991MHzのUSBモードで受信したものです。つまり、流星エコーは線で示した0.9kHz(900Hz)ラインに現れます。

エコーの出現位置が地味に違う

以下のような画像です。あなたならどれがエコーとしてカウントしますか?

「ドップラー効果が見える」+「エコー強度が強い」となると、

  • 6:21手前のエコー
  • 6:26過ぎのエコー
  • 6:27少し手前のエコー
  • 6:29過ぎも強度は若干10dBに到達していませんが、ドップラー効果は見える

さて・・・ではエコー数は3や4でしょうか?

答えは「違う」のです。これはエコー判断基準の次元ではなく、そもそも違うエコーがあるのです。

エコーが出現する周波数の場所は押さえておく

先の画像では、水色で囲んだ6:21手前と6:27手前の2つは違います。元々受信周波数は89.4MHzを89.3991MHzのUSBで受信なので0.9kHzです。

水色で囲んだものは、0.84kHzあたりですから、60Hzズレています。つまり、いつも受信している周波数ではないものといえます。

ということでこれらはカウントから除外する必要があります。

ご自身が受信している電波の周波数から、エコーが出現するはずの場所を間違えないこと

では練習です。次の画像は同カウントしますか?

同じく89.4MHzを89.3991MHzのUSBで受信しています。

比較的多くのエコーが受信されているようには見えます。

では答え合わせです。

いかがですか?

水色の部分は0.9kHzではなく0.94kHzラインで別物です。先ほど同様に、流星エコーが出現するはずの場所は0.9kHzラインです。

まとめ

流星エコーのカウントに困ることは絶対にあります。今回お伝えした「どれが流星エコーですか?」については、以下の観点から判断してみてください。

  • ドップラー効果が起きる
  • 受信している信号の強度が通常より強い
  • 流星エコーが出現するはずの周波数をおさえておく

そして、大事なことは、

ご自身の中での流星エコーと判断する「判断基準」を変えない。

最後にワンポイントアドバイス

私からのもうひとつワンポイントアドバイスは、「あまり悩まないこと」です。

「これはエコーかなぁ?」と悩めば悩むほどよくわからなくなります。

従って、画像をパット見て、目に飛び込んできたときの感覚は大事にした方がいいです。
もちろん、エコーと判別するための3つの観点は必須ですが、それをクリアしていれば、最初の「これがエコーだろうという」印象が、意外と「あなたの判断基準」であったりもします。

また、カウントした後も

「こんな質のデータを報告していいのかなぁ?」

と思う方が時々いらっしゃいます。気持ちはわかります。ただ、当プロジェクトの集計上も、前述のとおり、相対値で評価しているということと、さらに全データから見たときの分布も見ていますので、あまりにも分布上外れていれば、集計上除外します。従って、あなたのデータの「質」は深く考えずに、とりあえずカウントしたら報告してください。

まぁ、でも迷うこと、不安に思うことがありますので、その時はお気軽に「お問い合わせ」からご連絡ください。相談にのります!一緒に見てみましょう。

それでは今回はこのあたりで。

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