2021年 流星群観測展望(電波観測用)=見どころは多い年=
2021年の流星群観測展望(電波観測の場合)です.2021年はペルセウス座流星群をはじめ,何かと見どころが多い年です.
(眼視観測(目で見る場合)の情報は「2021年流星群観測展望(眼視観測用)」をご覧ください)
2022年情報はこちら:2022年流星電波観測展望
2021年流星群活動展望(総論:電波観測の場合)
流星電波観測の場合は,昼夜と月明りの制約がないため,単純にピーク時刻に放射点が昇っているかどうかがポイントです.ペルセウス座流星群は眼視観測では薄明時間帯ですが,電波観測にとっては放射点高度もあり好条件.さらにみずがめ座η流星群も日本時間で5月6日11時と昼前のピークですが,南中後の時間帯であり,こちらも好条件です.
また,9/1にダストトレイルとの交差が予想されているぎょしゃ座流星群は,日本からはピーク時刻が日中となりますが,電波観測では南中付近と好条件です.2021年は何かと話題の多い一年になりそうです.
以下のページには,年間の流星群を表形式で掲載していますので,一覧でご覧になりたい場合,ご利用ください.
・流星群リスト【公式版】(※国立天文台のホームページ)
・年間主要流星群リスト【眼視観測編】
・年間主要流星群リスト【電波観測編】
1月の流星群(電波観測編)
過去20年間のデータから,しぶんぎ座流星群は例年1月2日頃には活動が顕著に見えてきます.太陽黄経282°.4(2021年は1月3日6時JST頃に相当)を超えたあたりからエコー数が増加.太陽黄経283°.0(同3日20時JST)~283°.3(同4日3時JST)あたりがピーク.その後太陽黄経284°(同4日19時JST)あたりで終息します.ここ10年のピーク値は283°.15(同3日23時JST頃)となっており,東京では放射点が22時頃に昇りますので,放射点が昇ってすぐのピークとなりそうです.ロングエコー数は,年によって異なります.2014,19,20年は比較的多めに観測されています.
なお,8時~10時頃になると,日本では放射点が天頂付近となり,一時的に流星エコーが減る「天頂効果」が見られます.
この他,2015年にかに座κ流星群の突発出現が1月10日に観測されています.2016年以降はこの活動は観測されていませんが,2015年と同様であれば,ピーク時刻は1月10日1時頃になります.放射点も十分高い位置にありますが,2021年は特に突発出現の予測も発表されていないので,何事もないかもしれません.
1月の昼間流星群は,1月下旬から2月頭にかけて,やぎ座/いて座昼間流星群が活動する時期とされています.詳細は2月の観測展望をご覧ください.
2月の流星群(電波観測編)
例年,2月は目立った流星群の活動はなく,顕著な流星活動を捉えることはありません.
ケンタウルス座α流星群は,1974年や1980年に突発出現が観測されており,近年では2015年にも報告があります.ピークは2月8日とされています.ただし,放射点位置が赤緯-59度となるため,東京をはじめ日本のほとんどでは放射点が昇らず,小笠原や南西諸島でわずかに放射点が顔を出す程度です.従って,東南アジアや南半球で,もし出現すれば見ることができるでしょう.
昼間流星群は,1月下旬から2月頭にかけて,やぎ座/いて座昼間流星群が活動する時期とされています.世界の流星電波観測から現在も毎年データを集約していますが,流星数が通常よりもやや多めに観測される年もあります.ただし,そこまで活動レベルが高いわけでもありませんので,通常値に埋もれて気づかないことが多いと思います.なお,2010年~2019年の流星電波観測結果の分析からはピークは2月2日頃です.長期的に観測することで見えてくることもありますから,電波観測を行われている方は引き続き観測をお願いいたします.
3月の流星群(電波観測編)
3月は,ほとんど活動らしい活動を捉えることはないでしょう.ただし,何らかの活動があると捉えられることもあります.この頃は眼視観測も全体的にデータ数が少なくなる時期ですので,電波観測をされている方は,引き続き監視をお願いいたします.
4月の流星群(電波観測編)
4月22日夜~23日に「こと座流星群」が活動を見せます.2021年の観測条件としては,ピーク時刻は22日22時頃と放射点も見られる時間帯であり,観測条件は良好.活動規模は年によりますが,それほど大きな活動とはならないでしょう.過去の結果からは2009年や2011年,2012年など時々突出した活動が捉えられています.一方でこの流星群には突発癖があります(と言っても,活発な突発出現の記録は1982年が最後ですが・・・).
活動が捉えられる期間も眼視観測ほど長くはなく,過去14年の結果からは,太陽黄経31°.8(2021年だと4月22日9時JSTに相当)あたりから増加傾向が捉えられ,太陽黄経32°.2(同22日19時)頃に極大,太陽黄経33°(同23日14時頃)には終息します.約1日の活動を捉えることになるでしょう.
この他,4月末になると,5月にピークを迎えるみずがめ座η流星群の活動が見え始めます.早い年であれば4月29日あたりから見られることもあります.
5月の流星群(電波観測編)
5月は,6日明け方にみずがめ座η流星群が極大を迎えます.予想ピークは国内では6日11時頃と放射点も見られる位置にありますので,好条件で観測できます.
過去17年間のデータからは,活動自体は太陽黄経41°.5(2021年は5月2日8時JSTに相当)あたりから流星エコー数の増加が顕著となり,太陽黄経44°(同4日22時JST頃)~46°(同6日23時JST頃)あたりまでほぼ同規模でピークを迎え,太陽黄経50°(同11日3時JST頃)を超えたあたりで終息します.直近10年のピークは太陽黄経44°.8(同5日18時JST頃)に観測されています(眼視観測で言われているピーク予想時刻よりはやや早い.).
なお,みずがめ座η流星群は,12年周期で活動が活発化する傾向があり,2023年~2024年にまとまった流星が見られる可能性があります.
このほか,電波観測では昼間流星群を捉えることができる年があります(毎年とは言い切れず・・・).5月9日頃にはおひつじ座ε流星群,16日頃に5月おひつじ座流星群,20日頃にはくじら座ο流星群となってはいますが,5月上旬はみずがめ座η流星群の影響もあってなかなか顕著には捉えられません.16日や20日の流星群については,年によっては見られますが,過去10年近くのデータとして平均化してしまうと,その活動を検出することは困難でした.従って,2021年はどうなるか?という観点で観測された方がよいでしょう.
6月の流星群(電波観測編)
6月上旬に昼間流星群が極大を迎えます.過去17年の結果からは,活動自体は太陽黄経73°(2021年では6月4日に相当)付近から顕著となり,太陽黄経88°(同6月19日)付近まで見られます.特に,太陽黄経77°(同6月8日)~81°(同6月12日)にかけては昼間流星群の活動がピークになります.日本でも,世界データを統合しても明瞭です.
この活動は主に2つの流星群に起因すると考えられます(流星電波観測では群判定はできないので推測です).おひつじ群流星群が太陽黄経78°.0付近(同6月9日頃)のピークを構成し,ペルセウスζ流星群が,そのあとの太陽黄経84°.8(同6月15日頃)の活動を主に構成していると思われます.活動規模は推定値でおひつじ群流星群はペルセウスζ流星群のほぼ倍と推測しています.
この他,6月は月末に,6月うしかい座流星群が極大を迎えます.1998年と2004年に活発な活動を見せましたが,その後は目立った活動は捉えられていません.また,2021年も現時点で突発出現の予想は発表されていません.ピーク時刻は6月27日19時頃ですが,突発出現がこの日時とは限らないので,継続して観測してみてください
7月の流星群(電波観測編)
7月になるといよいよ流星群観測シーズンの到来といった様相となります.7月下旬には,みずがめ座δ流星群や,やぎ座流星群が極大を迎えます.みずがめ座δ流星群との相性が良いためか,豊富な流星エコーが観測されます.8月のペルセウス座流星群よりも多くみられることが多いです.
過去16年間のデータから,活動は太陽黄経118°付近(2021年の場合,7月21日頃)から明確にエコー数が増えてきます.観測地点によっては,もう数日前から見えるケースもあります.その後は右肩上がりに流星エコー数が増えるでしょう.太陽黄経125°から126°(同7月28日~29日)あたりがピークの頃でほぼ同じ規模の活動が続きます.その後は比較的ゆっくり下がります.太陽黄経134°(同8月6日)あたりで終息していると思われます.
なお,何が影響しているのかよくわかっていませんが,ほぼ毎年,太陽黄経122°.5(同7月25日)~124°.0(同7月27日)付近で一度小ピークを検出できます.その規模は年によって異なります.
なお,この7月末の活動の主体はみずがめ座δ流星群としていますが,電波観測では流星群判定ができないので,やぎ座流星群の活動も混在していると思いますが,どちらがどの程度の活動かはあくまで推測の域になります.
8月の流星群(電波観測編)
8月は,ペルセウス座流星群がピークを迎えます.ピーク予想時刻が日本時間で13日4時頃と電波観測にとっては好条件.1日あたりのロングエコー数もこの頃が年間最大で,にぎやかな印象を受けるでしょう.ただし,流星エコー数そのものは,ペルセウス座流星群の対地速度が速いため伸び悩むでしょう.
過去20年の観測結果からは,太陽黄経138°.5(2021年は8月11日に相当)付近から活動が顕著になり始め,太陽黄経139°.7から140°.2付近(同8月12日16時JST~13日9時JST頃)がピーク,そして太陽黄経141°.5(同8月14日)には終息するでしょう.過去平均からピークは太陽黄経139°.95となっており,2021年では8月13日3時JST頃に相当します.
このほか,8月上旬は7月のみずがめ座δ流星群や,やぎ座流星群の余韻が残るでしょう.6日頃に例年終息します.20日頃には,はくちょう座流星群の極大がありますが,その活動を顕著に捉えることはほとんどないでしょう.ペルセウス座流星群が終わると,流星数は減少の一途をたどり,例年は月末頃には活動が落ち着くきますが,2021年は9月1日にぎょしゃ座流星群の突発出現が予想されています.多少のずれの可能性も想定し,8月30日頃からは留意しながら観測しましょう.詳細は9月の観測展望に記載します.
9月の流星群(電波観測編)
例年,9月は,ちょうど流星群活動の狭間とあって,眼視観測・電波観測共に目立った活動が見られないことが多いですが,これまでも,9月ペルセウス座ε流星群やエリダヌス座ε流星群と思われる活動が見られる年もあり,何気に話題の多い月です.
そんな中,2021年は,ぎょしゃ座流星群について,2021年もしかしたら流星数が伸びる可能性が指摘されています.2019年にも活動が捉えられており,2007年には突発出現も観測されています.2021年の予想は,研究者によって多少の前後はありますが,おおよそ日本時間で9月1日6時~7時頃です.夜半前にぎょしゃ座そのものは昇ってきて,ピークとされる頃がちょうど南中時刻付近です.日本からは,予想ピーク時間帯が日の出後となるため,電波観測での観測がとても重要になります.なお,この類の情報は予想が当たることも外れることもありますので,過剰な期待をせず前後数日間チェックしてみてください.
この他,9月ペルセウス座ε流星群が2016年に杉本弘文氏によって出現が確認されましたが,見られる年・見られない年があります.2021年はどの程度となるかは要チェック.ピークは9月9日頃とされています.また,月末から10月頭にかけて,15P/Finlay彗星に関連する流星群の出現可能性が計算されています.詳しくは10月の観測展望に記載します.
昼間流星群としては,9月末にろくぶんぎ座流星群が活動しているのを捉えらる年があります.世界データを統合して,過去からの平均値を出すとなだらかな高原状の活動を捉えることができます.ただし活動規模がそこまで高くはないので,少しでも活動規模が低いと検出は難しいでしょう.国際流星機構ではピークは27日になっています.
10月の流星群(電波観測編)
10月りゅう座流星群がピークを迎えます.国際流星機構で記載されているピーク時刻では,9日3時(日本時)ですが,実際,過去のピークはこの時間からズレており,あまり気にしないほうがいいかもしれません.直近では2011年,2012年,2018年に突発出現が観測されていますが,今のところ2021年に突発出現の予想は出ていません.突発的に出現すれば,電波観測でも捉えることができるでしょう.
10月21日には,オリオン座流星群が極大を迎えます.2006年~2009年にかけて比較的活発な活動を見せましたが,その後は低調が続いています.ただし,12年周期で活発化するという話もあり,ここ数年はチェック(なお,今回(2018年~2021年)は前回(2006年~2009年)ほどの活動規模にはならない可能性を指摘する論文も出ています).2021年のピーク予想時刻は21日20時頃(日本時).対地速度が速いゆえに流星エコー数は伸びず,活発だった2009年頃までは捉えられていたものの,ここ数年はほぼ通常レベルにまで下がってきています.1日あたりのロングエコー数も通常期に比べれば多くなりますが,対地速度が同じく早いペルセウス座流星群に比べると,かなり少ないです.直近では2010年に多めに観測されています.
活動について,過去の電波結果からは,太陽黄経205°.5付近(2021年では10月18日に相当)から見られ,太陽黄経207°(同10月20日)を超えたあたりからは流星数が頭打ちに.ほぼ同じ活動レベルが太陽黄経209°(同10月23日)付近まで続き,その後緩やかに減少します.最終的には太陽黄経213°(同10月26日)付近で終息しています.直近10年のピーク値は207°.9(同10月21日18時JST).2004年以降の平均値では208°.6(同10月22日11時JST)となっています.直近10年はややピークが早めになっています.
この他,目立った流星群はありませんが,2021年においては,9月末~10月頭にかけて,15P/Finlay彗星による流星群の出現可能性が指摘されています.可能性がある日時は全部で5つ(全て日本時間です).(1)9月27日23時頃~9月28日2時頃,(2)9月29日11時頃~13時頃,(3)10月7日9時頃~10時頃,(4)10月7日12時頃,そして(5)10月8日6時頃.この中でも規模が大きいと予想されているのが(2)と(3).ZHR30~100の規模感が予想されています.なお,これらが当たる保証はありませんので,観測して確認することが一番です.
一方で,この流星群は残念ながら日本からは見ることが難しく,対地速度が11km/sととても遅く,流星電波観測の特性上観測しにくい流星群です.また,放射点の赤緯が-48度~-61度と予想されており(ピーク時刻によって放射点が違う),日本から見られるのは東京(北緯35度)の場合は赤緯-55度まで.観測適地は南米などで,南緯の緯度が高ければ高いほうが優位です.国内では過度な期待はせず,9月27日~10月8日頃にかけて要チェックでよいと思います.
11月の流星群(電波観測編)
11月はしし座流星群が極大を迎えます.2002年の素晴らしい活動を最後に,2009年にはZHR100程度の活動は見られましたが,当時のような華やかな活動はここ数年全く見られていません.基本的にはこの傾向がしばらくは続くと思われます.2021年のピークは18日2時頃(日本時)と,ピーク時刻としては好条件.ただし,突発出現がない限り,活動はほとんど捉えられないでしょう.対地速度が速いためロングエコーは散発すると思いますが,派手な活動とまではいかないと思います.
このほか,5日頃を中心として,高原上の活動が見られることがあります.これは,おうし座流星群によるものと思われます.ロングエコー数も同様にあがることがあります.
12月の流星群(電波観測編)
12月はふたご座流星群がピークを迎えます.年間最大の流星エコー数が捉えられるでしょう.日本国内では1時から2時頃に輻射点高度が天頂付近を通過するときにエコー数が激減する「天頂効果」が見られます.ロングエコーもそこそこ見られると思いますので,充実した流星群活動となるでしょう.ただし,予想ピーク時刻は日本時間で14日16時と夕方のため,観測条件はよくありません.13日~14日にかけては増加傾向,14日~15日にかけては減少傾向となるでしょう.
活動は,過去の電波観測結果から,太陽黄経257°(2021年では12月9日に相当)あたりから活動が捉え始め,261°.5から262°.2付近(同12月13日23時JSTから12月14日16時JST頃)までがピークの頃,その後は急速に活動が低下し,太陽黄経264°(同12月16日)には終息します.直近10年のピーク値は太陽黄経262°.0(同12月14日11時JST)頃となっており,眼視観測で言われる通常ピークよりは若干早めです.また,活動規模もこの10年は高く,2000年代と比較すると約1.5倍になっています.
この他,12月22日~23日にかけて,こぐま座流星群がピークを迎えます.こぐま座流星群の放射点が沈むことはないので,電波観測では1日中観測できます.通常のピークは23日0時JST頃.2021年は,12月22日15時~16時頃JSTにダストトレイルとの遭遇が予想されています.
最近では,2014年は比較的多めの活動が捉えられており,2016年~2018年にかけても活動が捉えられています.
出典・参考資料及びご留意事項
本ページは,主に国際流星機構が発行している「Meteor Shower Calendar 2021」(英文)の情報を参考にしています.一部,国際天文学連合(IAU)や,国立天文台の情報も参考しております.
本ページに記載の情報は,可能な限り最新としていますが,更新が間に合わない場合もあります.また,これら流星群の出現を確実にお約束するものではありません.また,見られる流星数も空の条件や周囲の条件,地理的条件によって大きく変化しますので,予めご了承ください.