2023年 流星群観測展望(電波観測用)=しぶんぎ・ふたごは好条件=
2023年の流星群観測展望(電波観測の場合)です.三大流星群のうち,しぶんぎ座流星群/ふたご座流星群は好条件.ペルセウス座流星群は条件悪.さらに,みずがめ座η流星群も活発化する可能性があり要チェック.
(眼視観測(目で見る場合)の情報は「2023年流星群観測展望(眼視観測用)」をご覧ください)
2023年流星群活動展望(総論:電波観測の場合)
流星電波観測の場合は,昼夜と月明りの制約がないため,単純にピーク時刻に放射点が昇っているかどうかがポイントです.しぶんぎ座流星群は日中ですが,電波観測にとっては放射点高度もあり好条件.ふたご座流星群は眼視観測同様,好条件に恵まれます.
また,2023年は,いくつかの流星群でダストトレイルとの接近が発表されていますが,その中でもみずがめ座η流星群や,ペルセウス座流星群,209P/LINEAR彗星に関連する「きりん座流星群」あたりは要チェック.
以下のページには,年間の流星群を表形式で掲載していますので,一覧でご覧になりたい場合,ご利用ください.
・流星群リスト【公式版】(※国立天文台のホームページ)
・年間主要流星群リスト【眼視観測編】
・年間主要流星群リスト【電波観測編】
1月の流星群(電波観測編)
しぶんぎ座流星群は1月4日12時頃(日本時)がピーク.放射点高度も東京で40度付近と好条件.ただし,ピーク後の推移は放射点が沈んでいくため,日本からは急減するでしょう.ロングエコー数は,年によって異なります.2014,19,20年は比較的多めに観測されています.また,2021年の活動は例年の1.5倍近い活動が見られました.2022年は例年並みの活動に戻っています.
なお,8時~10時頃になると,日本では放射点が天頂付近となり,一時的に流星エコーが減る「天頂効果」が見られます.
1月の昼間流星群は,1月下旬から2月頭にかけて,やぎ座/いて座昼間流星群が活動する時期とされています.詳細は2月の観測展望をご覧ください.
2月の流星群(電波観測編)
例年,2月は目立った流星群の活動はなく,顕著な流星活動を捉えることはありません.昼間流星群は,1月下旬から2月頭にかけて,やぎ座/いて座昼間流星群が活動する時期とされています.世界の流星電波観測から現在も毎年データを集約していますが,流星数が通常よりもやや多めに観測される年もあります.ただし,そこまで活動レベルが高いわけでもありませんので,通常値に埋もれて気づかないことが多いと思います.なお,2010年~2019年の流星電波観測結果の分析からはピークは2月2日頃です.長期的に観測することで見えてくることもありますから,電波観測を行われている方は引き続き観測をお願いいたします.
3月の流星群(電波観測編)
3月は,ほとんど活動らしい活動を捉えることはないでしょう.ただし,何らかの活動があると捉えられることもあります.この頃は眼視観測も全体的にデータ数が少なくなる時期ですので,電波観測をされている方は,引き続き監視をお願いいたします.
なお,3月21日には小惑星2016BA14からのダストとの接近が予想されていますが,放射点の赤緯が-51°であり,放射点はほとんど昇りません.ピーク予想は21日0時~4時頃.対地速度が17km/sと遅め.
4月の流星群(電波観測編)
4月22日夜~23日に「こと座流星群」が活動を見せます.2023年の観測条件としては,ピーク時刻は過去の電波観測結果からは23日7時頃(国際流星機構は23日10時頃).放射点は45度ほど.活動規模は年によりますが,それほど大きな活動とはならないでしょう.過去の結果からは2009年や2011年,2012年など時々突出した活動が捉えられています.一方でこの流星群には突発癖があります(と言っても,活発な突発出現の記録は1982年が最後ですが・・・).
活動が捉えられる期間も眼視観測ほど長くはなく,過去14年の結果からは,太陽黄経31°.8(2023年だと4月22日21時JSTに相当)あたりから増加傾向が捉えられ,太陽黄経32°.2(同23日1時)頃に極大,太陽黄経33°(同23日22時頃)には終息します.約1日の活動を捉えることになるでしょう.
昼間流星群では,4月うお座昼間流星群が,4月こと座流星群がピークを迎えた後にピークを迎えます.最近,過去の集計がなされ,4月23日頃をピークとした小規模な活動が検出されています.
この他,4月末になると,5月にピークを迎えるみずがめ座η流星群の活動が見え始めます.早い年であれば4月29日あたりから見られることもあります.
5月の流星群(電波観測編)
5月は,6日明け方にみずがめ座η流星群が極大を迎えます.予想ピークは国内では7日0時頃と放射点は地平線下.また,流星電波観測の過去のデータからは,活動自体は太陽黄経44°.3(2023年は5月5日18時JSTに相当)となっており,こちらでも放射点は地平線下の時間帯です.ただし,みずがめ座η流星群の活動は数日間同レベルになりますので,あまりピーク時刻は気にせず観測できるでしょう.この頃はロングエコー数も増えてくるでしょう.
なお,2023年と2024年は例年よりも活発な活動になるという研究も出ています.A.Egal氏らは,5日4時頃JSTを中心に前後半日の予想。M.Maslov氏の計算では、4日10時~17時頃JSTと,6日10時~7日4時頃JSTでダストとの接近が予想されています.いずれにしても4日~7日まではエコー数と共にロングエコー数の推移もチェックしましょう.
このほか,2022年に活動を見せた209P/LINEAR彗星に関連するきりん座流星群について,2023年もいくつかのダストトレイルとの接近が予想されています.1 つめは5月24日16:40頃JSTに接近する1873年のダストトレイル,2つめが24日21:40頃JSTに接近する1903年のダストトレイル,そ して,24日22:07頃JSTに接近する1909年のダストトレイルです.なお,活動規模は推測されていません.放射点は日本からは沈みませんので,昼夜問わず観測できる電波観測の強みを生かして,ウォッチしましょう.
電波観測では昼間流星群を捉えることができる年があります(毎年とは言い切れず・・・).5月9日頃にはおひつじ座ε流星群,16日頃に5月おひつじ座流星群,20日頃にはくじら座ο流星群となってはいますが,5月上旬はみずがめ座η流星群の影響もあってなかなか顕著には捉えられません.16日や20日の流星群については,年によっては見られますが,過去10年近くのデータとして平均化してしまうと,その活動を検出することは困難でした.従って,2023年はどうなるか?という観点で観測された方がよいでしょう.
6月の流星群(電波観測編)
6月上旬に昼間流星群が極大を迎えます.過去の結果からは,活動自体は太陽黄経73°(2023年では6月4日に相当)付近から顕著となり,太陽黄経88°(同6月19日)付近まで見られます.特に,太陽黄経77°(同6月8日)~81°(同6月12日)にかけては昼間流星群の活動がピークになります.日本でも,世界データを統合しても明瞭です.
この活動は主に2つの流星群に起因すると考えられます(流星電波観測では群判定はできないので推測です).おひつじ座昼間流星群が太陽黄経77°.7付近(同6月9日頃)のピークを構成し,ペルセウス座ζ昼間流星群が,そのあとの太陽黄経83°.5(同6月15日頃)の活動を主に構成していると思われます.活動規模は推定値でおひつじ座昼間流星群はペルセウス座ζ昼間流星群のほぼ倍と推測しています.この他6月末にはおうし座β昼間流星群がピークとなりますが,ほとんど目立った活動を捉えたことはありません.
この他,6月は月末に,6月うしかい座流星群が極大を迎えます.1998年と2004年に活発な活動を見せましたが,その後は目立った活動は捉えられていません.また,2023年も現時点で突発出現の予想は発表されていません.ピーク時刻は6月28日7時頃ですが,突発出現がこの日時とは限らないので,継続して観測してみてください
7月の流星群(電波観測編)
7月になるといよいよ流星群観測シーズンの到来といった様相となります.7月下旬には,みずがめ座δ流星群や,やぎ座流星群が極大を迎えます.みずがめ座δ流星群との相性が良いためか,豊富な流星エコーが観測されます.8月のペルセウス座流星群よりも多くみられることが多いです.
過去のデータから,活動は太陽黄経118°付近(2023年の場合,7月21日頃)から明確にエコー数が増えてきます.観測地点によっては,もう数日前から見えるケースもあります.その後は右肩上がりに流星エコー数が増えるでしょう.太陽黄経125°から126°(同7月29日~30日)あたりがピークの頃でほぼ同じ規模の活動が続きます.その後は比較的ゆっくり下がります.太陽黄経134°(同8月6日)あたりで終息していると思われます.
なお,何が影響しているのかよくわかっていませんが,ほぼ毎年,太陽黄経122°.5(同7月25日)~124°.0(同7月27日)付近で一度小ピークを検出できます.その規模は年によって異なります.
なお,この7月末の活動の主体はみずがめ座δ流星群としていますが,電波観測では流星群判定ができないので,やぎ座流星群の活動も混在していると思いますが,どちらがどの程度の活動かはあくまで推測の域になります.
8月の流星群(電波観測編)
8月は,ペルセウス座流星群がピークを迎えます.ピーク予想時刻が日本時間で13日17時頃と放射点が沈んでいる時間帯で条件は悪い.ただし,前後数日は活動が見られるでしょう.また,1日あたりのロングエコー数はこの頃が年間最大となり,にぎやかな印象を受けるでしょう.一方で,流星エコー数そのものは,ペルセウス座流星群の対地速度が速いため伸び悩むでしょう.
なお,2021年にはピークとされる時刻の約1.5日後に突発出現を見せました(2021年ペルセウス座流星群電波観測結果).加えて2022年も小規模ながらその活動を捉えています.もし,昨年同様だとすると,2023年は8月15日6時頃に相当し,電波観測では問題なく観測できます.
また,2023年は13日12:20頃JSTや,14日10時~12時JST付近でダストトレイルとの接近が計算されています.ただし,かなり古いダストトレイルであったり,規模が予想されていなかったりと,出現があるかないか,規模がどうかは観測しないことにはわかりません.
このほか,8月上旬は7月のみずがめ座δ流星群や,やぎ座流星群の余韻が残るでしょう.6日頃に例年終息します.20日頃には,はくちょう座流星群の極大がありますが,その活動を顕著に捉えることはほとんどないでしょう.ペルセウス座流星群が終わると,流星数は減少の一途をたどり,例年は月末頃には活動が落ち着きます.
9月の流星群(電波観測編)
例年,9月は,ちょうど流星群活動の狭間とあって,眼視観測・電波観測共に目立った活動が見られないことが多いですが,これまでも,9月ペルセウス座ε流星群やエリダヌス座ε流星群と思われる活動が見られる年もあり,何気に話題の多い月です.
2021年に話題となり,2022年は予想通り目立った活動がなかったぎょしゃ座流星群について,2023年はダストトレイルとの接近の予想もありません.この他,9月ペルセウス座ε流星群が9月9日頃ピークと予想されています.2021年や2018年,2016年に杉本弘文氏によって出現が確認されています.2023年はどの程度となるかは要チェック.
昼間流星群としては,9月末にろくぶんぎ座流星群が活動しているのを捉えらる年があります.世界データを統合して,過去からの平均値を出すとなだらかな高原状の活動を捉えることができます.ただし活動規模がそこまで高くはないので,少しでも活動規模が低いと検出は難しいでしょう.国際流星機構ではピークは27日になっていますが,流星電波観測の過去の結果からは10月2日頃がピークとなっています.
10月の流星群(電波観測編)
10月りゅう座流星群がピークを迎えます.国際流星機構で記載されているピーク時刻では,9日16時(日本時)ですが,実際,過去のピークはこの時間からズレており,あまり気にしないほうがいいかもしれません.直近では2011年,2012年,2018年に突発出現が観測されています.2023年はM.Maslov氏によると10月8日21時頃に若干の増加が予想されていますが,国際流星機構では指摘もされていないことから,出現については不透明です.
10月22日には,オリオン座流星群が極大を迎えます.2006年~2009年にかけて比較的活発な活動を見せましたが,その後は低調が続いています.対地速度が速いゆえに流星エコー数は伸びず,活発だった2009年頃までは捉えられていたものの,ここ数年はほぼ通常レベルにまで下がってきています.2023年のピーク予想時刻は国際流星機構の記載では22日3時頃(日本時).流星電波観測ではこの時刻よりも少し遅めのピークで太陽黄経208°.6(2023年では10月22日9時JST)です.ピークは同規模の活動が数日間は続きますので,そこまでピーク時刻を気にしなくても大丈夫です.1日あたりのロングエコー数も通常期に比べれば多くなりますが,対地速度が同じく早いペルセウス座流星群に比べると,かなり少ないです.
なお,2022年には太陽黄経205°.2度付近でサブピーク構造が検出されました.ただし,一部のサイトでは検出されなかったり,ヨーロッパの光学観測では特に報告がなかったりと,活動実態はよくわかりません.同太陽黄経だと2023年は10月19日13時過ぎに相当します.日本からは放射点が沈んでいる時間帯となるので,条件はよくないでしょう.
11月の流星群(電波観測編)
11月はしし座流星群がピークを迎えます.通常ピークは18日14時頃と日中で放射点が沈んでいる時間帯.また,2023年は1767年放出のダストトレイルとの接近が予想されていますが,予想時刻が21日22時頃(日本時)であり,日本では放射点が沈んでいる時間帯です.ただしズレる可能性がないわけではないので,要チェック.なお,流星電波観測の場合,しし座流星群のように対地速度が速いと,ある程度まとまった流星が出現しないとその活動を捉えることができません.対地速度が速いためロングエコーは散発すると思いますが,派手な活動とまではいかないと思います.
このほか,5日頃を中心として,高原上の活動が見られることがあります.これは,おうし座流星群によるものと思われます.ロングエコー数も同様にあがることがあります.
12月の流星群(電波観測編)
12月はふたご座流星群がピークを迎えます.年間最大の流星エコー数が捉えられるでしょう.日本国内では1時から2時頃を中心に,放射点高度が天頂付近を通過するときにエコー数が激減する「天頂効果」が見られます.ロングエコーもそこそこ見られると思いますので,充実した流星群活動となるでしょう.予想ピーク時刻は国際流星機構によると,日本時間で15日4時頃(JST).過去の流星電波観測結果からは太陽黄経262°.0度(12月15日0時頃JST)と少し早めに出ます.いずれにしても,14日~15日がピークです.ピークの後は急速に活動が低下します.
12月22日~23日にかけて,こぐま座流星群がピークを迎えます.こぐま座流星群の放射点が沈むことはないので,電波観測では1日中観測できます.通常のピークは過去の電波観測の結果からは23日10時JST頃,国際流星機構の値でも23日13時頃と,いずれにしても日本からは放射点高度も十分ですので,好条件で観測できるでしょう.2023年は,P.Jenniskens氏によって,22日23時頃に多少の増加がみられる可能性を指摘しています.J.Vaubaillon氏も23日2時頃と,22日 ~23日は要チェックです.
2023年は,12月3日4時頃を中心にアンドロメダ座流星群が見られる可能性が指摘されています.また,12月12日20時頃には,46P/Wirtanen彗星に関連する流星群の出現も期待されています.ただし,いずれも,流星電波観測で捉えられるかはわかりません.
出典・参考資料及びご留意事項
出典・参考資料
- Meteor Shower Calendar 2023(英文):国際流星機構(IMO)発行
- Meteor Data Center(英文):国際天文学連合
- 流星群の和名一覧:国立天文台
- A new Working List of meteor showers (Rainer Arlt et al), WGN 34:3(2006)
- Meteor Showers and their Parent Comets (P. Jenniskens) (2006)
- Meteor Shower Workbook 2014 (J.Rendtel) - International Meteor Organization (2014)
- Major and Daytime Meteor Showers using Radio Meteor Observation in the World covering the period 2001-2016(H.Ogawa and C.Steyaert), WGN 45:4(2017)
ご留意事項
本ページに記載の情報は,可能な限り最新としていますが,更新が間に合わない場合もあります.また,これら流星群の出現を確実にお約束するものではありません.また,見られる流星数も空の条件や周囲の条件,地理的条件によって大きく変化しますので,予めご了承ください.