2025年 流星群観測展望(電波観測用)=ペルセウスが好条件=
2025年の流星群観測展望(電波観測の場合)です.三大流星群のうち,しぶんぎ座流星群/ふたご座流星群はまずまず.ペルセウス座流星群は好条件です.この他,10月りゅう座流星群,しし座流星群ではダストトレイルとの接近も予想されており要チェック.
(眼視観測(目で見る場合)の情報は「2025年流星群観測展望(眼視観測用)」をご覧ください)
2025年流星群活動展望(総論:電波観測の場合)
流星電波観測の場合は,昼夜と月明りの制約がないため,単純にピーク時刻に放射点が昇っているかどうかがポイントです.ペルセウス座流星群は好条件.しぶんぎ座流星群はピークが放射点高度が昇ってすぐ,ふたご座流星群は放射点が低い夕方がピークではありますが,まずまずの条件です.
また,2025年は,いくつかの流星群でダストトレイルとの接近が発表されていますが,その中でも10月りゅう座流星群,しし座流星群はチェックしておきましょう.
以下のページには,年間の流星群を表形式で掲載していますので,一覧でご覧になりたい場合,ご利用ください.
・流星群リスト【公式版】(※国立天文台のホームページ)
・年間主要流星群リスト【眼視観測編】
・年間主要流星群リスト【電波観測編】
1月の流星群(電波観測編)
しぶんぎ座流星群は1月4日1時頃(日本時)がピーク.放射点は東京で20度を切るくらいの高さ.とはいえ,ピーク前後数時間は活発な活動が見られるため,放射点が昇ってから4日昼までが一番の見頃となるでしょう.ロングエコー数は,年によって異なります.2014,19,20年は比較的多めに観測されています.また,ここ最近では,2021年や2024年は例年の1.5倍近い活動が見られました.
なお,8時~10時頃になると,日本では放射点が天頂付近となり,一時的に流星エコーが減る「天頂効果」が見られます.
1月の昼間流星群は,1月下旬から2月頭にかけて,やぎ座/いて座昼間流星群が活動する時期とされています.詳細は2月の観測展望をご覧ください.
2月の流星群(電波観測編)
例年,2月は目立った流星群の活動はなく,顕著な流星活動を捉えることはありません.昼間流星群は,1月下旬から2月頭にかけて,やぎ座/いて座昼間流星群が活動する時期とされています.世界の流星電波観測から現在も毎年データを集約していますが,流星数が通常よりもやや多めに観測される年もあります.ただし,そこまで活動レベルが高いわけでもありませんので,通常値に埋もれて気づかないことが多いと思います.なお,2010年~2019年の流星電波観測結果の分析からはピークは2月2日頃です.長期的に観測することで見えてくることもありますから,電波観測を行われている方は引き続き観測をお願いいたします.
3月の流星群(電波観測編)
3月は,ほとんど活動らしい活動を捉えることはないでしょう.ただし,何らかの活動があると捉えられることもあります.この頃は眼視観測も全体的にデータ数が少なくなる時期ですので,電波観測をされている方は,引き続き監視をお願いいたします.
4月の流星群(電波観測編)
4月22日夜~23日に「こと座流星群」が活動を見せます.2025年の観測条件としては,ピーク時刻は過去の電波観測結果からは4月22日19時頃(国際流星機構によるピーク日時は4月22日22時頃).活動規模は年によりますが,それほど大きな活動とはならないでしょう.一方,この流星群には突発癖があるといわれています(と言っても,活発な突発出現の記録は1982年が最後ですが・・・).
活動が捉えられる期間も眼視観測ほど長くはなく,過去14年の結果からは,太陽黄経31°.8(2025年だと4月22日9時JSTに相当)あたりから増加傾向が捉えられ,太陽黄経33°(4月23日15時頃)には終息します.約1日の活動を捉えることになるでしょう.
昼間流星群では,4月うお座昼間流星群が,4月こと座流星群がピークを迎えた後にピークを迎えます.最近,過去の集計がなされ,4月23日頃をピークとした小規模な活動が検出されています.
この他,4月末になると,5月にピークを迎えるみずがめ座η流星群の活動が見え始めます.早い年であれば4月29日あたりから見られることもあります.また,佐藤幹哉氏によって,4月やぎ座α流星群の活動について言及されています.2024年も活動が検出されたようです.2025年は4月7日22:35頃,対地速度が早い流星として見られるかもしれません.出現数は不明です.対地速度が早いので電波観測では不利ですが,何が起きるかわかりませんのでチェックはしておきましょう.
5月の流星群(電波観測編)
5月6日12時頃にみずがめ座η流星群がピークを迎えます.みずがめ座η流星群の放射点は13時頃沈むので(東京),5月6日未明から昼までがピークとなるでしょう.流星電波観測の過去のデータからは,活動自体は太陽黄経44°.2(2025年は5月5日4時JSTに相当)となっており,こちらも放射点が昇っている時間帯です.なお,みずがめ座η流星群の活動は数日間同レベルになりますので,あまりピーク時刻は気にせず観測できるでしょう.この頃はロングエコー数も増えてくるでしょう.
なお,2023年と2025年は例年よりも活発な活動になるという研究も出ています(A.Egal氏ら).2023年や2024年はそこまで多くはありませんでしたが,4日~7日まではエコー数と共にロングエコー数の推移もチェックしましょう.
電波観測では昼間流星群を捉えることができる年があります(毎年とは言い切れず・・・).5月9日頃にはおひつじ座ε流星群,16日頃に5月おひつじ座流星群,20日頃にはくじら座ο流星群となってはいますが,5月上旬はみずがめ座η流星群の影響もあってなかなか顕著には捉えられません.16日や20日の流星群については,年によっては見られますが,過去10年近くのデータとして平均化してしまうと,その活動を検出することは困難でした.従って,2025年はどうなるか?という観点で観測された方がよいでしょう.
6月の流星群(電波観測編)
6月上旬に昼間流星群が極大を迎えます.過去の結果からは,活動自体は太陽黄経73°(2025年では6月3日に相当)付近から顕著となり,太陽黄経88°(同6月19日)付近まで見られます.特に,太陽黄経77°(同6月7日)~81°(同6月12日)にかけては昼間流星群の活動がピークになります.日本でも,世界データを統合しても明瞭です.
この活動は主に2つの流星群に起因すると考えられます(流星電波観測では群判定はできないので推測です).おひつじ座昼間流星群が太陽黄経77°.7付近(同6月8日頃)のピークを構成し,ペルセウス座ζ昼間流星群が,そのあとの太陽黄経83°.5(同6月14日頃)の活動を主に構成していると思われます.活動規模は推定値でおひつじ座昼間流星群はペルセウス座ζ昼間流星群のほぼ倍と推測しています.この他6月末にはおうし座β昼間流星群がピークとなりますが,ほとんど目立った活動を捉えたことはありません.
この他,6月は月末に,6月うしかい座流星群が極大を迎えます.1998年と2004年に活発な活動を見せましたが,その後は目立った活動は捉えられていません.また,2025年も現時点で突発出現の予想は発表されていません.ピーク時刻は6月27日20時頃ですが,突発出現がこの日時とは限らないので,継続して観測してみてください
7月の流星群(電波観測編)
7月になるといよいよ流星群観測シーズンの到来といった様相となります.7月下旬には,みずがめ座δ南流星群や,やぎ座流星群が極大を迎えます.特にみずがめ座δ南流星群との相性が良いためか,豊富な流星エコーが観測されます.8月のペルセウス座流星群よりも多くみられることが多いです.
過去のデータから,活動は太陽黄経118°付近(2025年の場合,7月20日頃)から明確にエコー数が増えてきます.観測地点によっては,もう数日前から見えるケースもあります.その後は右肩上がりに流星エコー数が増えるでしょう.太陽黄経125°から126°(同7月28日~29日)あたりがピークの頃でほぼ同じ規模の活動が続きます.その後は比較的ゆっくり下がります.太陽黄経134°(同8月6日)あたりで終息していると思われます.
なお,何が影響しているのかよくわかっていませんが,ほぼ毎年,太陽黄経122°.5(同7月25日)~124°.0(同7月27日)付近で一度小ピークを検出できます.その規模は年によって異なります.
なお,この7月末の活動の主体はみずがめ座δ南流星群としていますが,電波観測では流星群判定ができないので,やぎ座流星群の活動も混在していると思いますが,どちらがどの程度の活動かはあくまで推測の域になります.
8月の流星群(電波観測編)
8月は,ペルセウス座流星群がピークを迎えます.ピーク予想時刻が日本時間で13日5時頃と電波観測では好条件に恵まれます.1日あたりのロングエコー数は,この頃が年間最大となり,にぎやかな印象を受けるでしょう.一方で,流星エコー数そのものは,ペルセウス座流星群の対地速度が速いため伸び悩むでしょう.
なお,2021年にはピークとされる時刻の約1.5日後に,2024年は1日後に突発出現を見せています.もし,同様の頃に見られるとすると,2025年は8月14日18時頃(2021年の突発),8月13日23時頃(2024年の突発)に相当します.電波観測では放射点高度が低いものの観測はできるでしょう.
この他,Vaubaillon氏によると,1079年放出のダストトレイルに8月12日22時頃接近すると計算されています.また,P.Jenniskenss氏も8月12日13時あたりで多少の増加を予想しています.
このほか,8月上旬は7月のみずがめ座δ流星群や,やぎ座流星群の余韻が残るでしょう.8月6日頃に例年終息します.8月20日頃には,はくちょう座流星群の極大がありますが,その活動を顕著に捉えることはほとんどないでしょう.ペルセウス座流星群が終わると,流星数は減少の一途をたどり,例年は月末頃には活動が落ち着きます.
9月の流星群(電波観測編)
例年,9月は,ちょうど流星群活動の狭間とあって,眼視観測・電波観測共に目立った活動が見られないことが多いですが,これまでも,9月ペルセウス座ε流星群やエリダヌス座ε流星群と思われる活動が見られる年もあり,何気に話題の多い月です.
2021年に話題となり,2022年は予想通り目立った活動がなかったぎょしゃ座流星群について,2025年はダストトレイルとの接近の予想もありません.
この他,Vaubaillon氏によると,9月13日6時少し手前にエリダヌス座ε流星群のダストトレイルと接近するという予想があります.放射点は22時頃から昇っているので問題ありませんが,「weak activity」と記載されているので数は期待できないでしょう.過去には2021年や2018年,2016年に杉本弘文氏の集計によって出現が確認されています.
昼間流星群としては,9月末にろくぶんぎ座流星群が活動しているのを捉えらる年があります.世界データを統合して,過去からの平均値を出すとなだらかな高原状の活動を捉えることができます.2023年と2024年は過去平均よりは高めの活動でした.国際流星機構ではピークは9月27日になっていますが,流星電波観測の過去の結果からは10月2日頃がピークとなっています.
10月の流星群(電波観測編)
10月りゅう座流星群がピークを迎えます.国際流星機構で記載されているピーク時刻では,9日4時(日本時)ですが,実際,過去のピークはこの時間からズレており,あまり気にしないほうがいいかもしれません.直近では2011年,2012年,2018年に突発出現が観測されています.
2025年は10月9日0時~1時頃に2012年放出のダストトレイルと接近する予想が出ています.日本では放射点が沈まない場所が多いのですが,この頃はちょうど高度が低い時間帯であり,東京では地平高度10度程度です.また,今回接近する流星物質は小さい,つまり暗い流星が多いと予想されています.
10月22日には,オリオン座流星群が極大を迎えます.2006年~2009年にかけて比較的活発な活動を見せましたが,その後は低調が続いています.対地速度が速いゆえに流星エコー数は伸びず,活発だった2009年頃までは捉えられていたものの,ここ数年はほぼ通常レベルにまで下がってきています.2025年のピーク予想時刻は国際流星機構の記載では10月21日21時頃(日本時).流星電波観測ではこの時刻よりも少し遅めのピークで太陽黄経208°.6(2025年では10月22日11時JST)です.ピークは同規模の活動が数日間は続きますので,そこまでピーク時刻を気にしなくても大丈夫です.1日あたりのロングエコー数も通常期に比べれば多くなります.
11月の流星群(電波観測編)
11月はしし座流星群がピークを迎えます.通常ピークは18日3時頃と観測条件は良好.ただし,突発出現がある時はこの時刻は関係ありません.2025年はいくつかのダストトレイルとの接近が佐藤幹哉氏・Vaubaillon氏によって予想されています.1699年放出のダストについて,11月18日4時~8時にかけて接近します.特に7:40頃の接近が期待できるようです.日本では既に夜明けですが,電波観測では放射点高度に依存します.この時間帯の放射点高度は十分ありますので,条件よく観測できるでしょう.
この他,Vaubaillon氏は1167年ダストトレイルが11月10日7時頃,1633年放出のダストトレイルが11月15日12時頃に接近すると予想していますが,規模は全くわかっていません.1167年のダストトレイルとの接近は日本から好条件で観測できます.1633年放出のダストトレイルとの接近については,放射点が沈む頃の時間なので,数が多ければ捉えられる可能性はありますが厳しいでしょう.
なお,電波観測の場合,しし座流星群のように対地速度が速いと,ある程度まとまった流星が出現しないとその活動を捉えることができません.対地速度が速いためロングエコー数は増えると思います.
このほか,おうし座流星群の南群が11月5日頃,北群が11月12日頃にそれぞれピークを迎えます.数こそ多くはありませんが,1998年には火球が多く流れるなど,時々明るい流星が見られます.2025年も明るい流星が見られる可能性が指摘されています(木星公転周期との関係による).電波観測ではロングエコー数が増える傾向にあるため,特に11月上旬の頃チェックしてみましょう.
12月の流星群(電波観測編)
12月はふたご座流星群がピークを迎えます.年間最大の流星エコー数が捉えられるでしょう.日本国内では1時から2時頃を中心に,放射点高度が天頂付近を通過するときにエコー数が激減する「天頂効果」が見られます.ロングエコーもそこそこ見られると思いますので,充実した流星群活動となるでしょう.予想ピーク時刻は国際流星機構によると,日本時間で14日17時頃(JST).過去の流星電波観測結果からは太陽黄経262°.0度(12月14日12時頃JST)と少し早めに出ます.放射点は18時前に昇り,翌9時過ぎに沈むため,いずれにしてもピークを捉えるのは難しいでしょう.ただし,特にピーク前は2日程は活動が活発なため,2025年は12月13日~14日と14日~15日がほぼ同規模になると思われます.
なお,2023年にも指摘された46P/Wirtanen彗星による流星ですが,2025年も7公転前のダストトレイルとの接近がVaubaillon氏によって予想されています.2023年の際は流星電波観測国際プロジェクトとしてこの彗星に起因する流星群は小規模だったと結論づけています(参考:2023年ふたご座流星群観測結果-サブピークが一体何なのかを参照).2025年はどうなるかわかりませんが,予想では12月12日19時~13日7時にかけて.ただし,放射点は22:30頃には沈むため,12日薄明が終了する18時~要チェックでしょう.南中時でも高度が16度程度と低いのですが,対地速度が10km/sととても遅いため,放射点が浮き上がって見える天頂引力がそれなりに効くでしょう.
12月22日~23日にかけて,こぐま座流星群がピークを迎えます.こぐま座流星群の放射点が沈むことはないので,電波観測では1日中観測できます.通常のピークは過去の電波観測の結果からは12月22日22時JST頃,国際流星機構の値では12月23日1時頃です.2025年はP.Jenniskens氏によって12月22日15時少し手前で流星数の増加が予想されています.電波観測では観測できますのでチェックしましょう!
出典・参考資料及びご留意事項
出典・参考資料
- Meteor Shower Calendar 2025(英文):国際流星機構(IMO)発行
- Meteor Data Center(英文):国際天文学連合
- 流星群の和名一覧:国立天文台
- A new Working List of meteor showers (Rainer Arlt et al), WGN 34:3(2006)
- Meteor Showers and their Parent Comets (P. Jenniskens) (2006)
- Meteor Shower Workbook 2014 (J.Rendtel) - International Meteor Organization (2014)
- Major and Daytime Meteor Showers using Radio Meteor Observation in the World covering the period 2001-2016(H.Ogawa and C.Steyaert), WGN 45:4(2017)
- Report of Meteor Showers using worldwide Radio Meteor Observations (H.Ogawa), Proceeding of IMC 2022 (2023)
ご留意事項
本ページに記載の情報は,可能な限り最新としていますが,更新が間に合わない場合もあります.また,これら流星群の出現を確実にお約束するものではありません.また,見られる流星数も空の条件や周囲の条件,地理的条件によって大きく変化しますので,予めご了承ください.